サプライチェーンにおけるリーンとは、資材調達、製造流通、発注指示プロセスを合わせた総体的なものである。つまり、組織を機能的な塊としてではなく、あらゆる業務が統合されたものとして考えるためには、ある程度の企業向け技術が必要だということだ。しかし、技術的なリーン・サプライチェーンを採用する前に、製造業幹部がリーン・サプライチェーンの用語を把握しなければならない。この記事では、これらの用語を見直し、リーンの基礎となる重要な概念を取り上げてみたい。ここでは、以下の内容を検討していく:
- リーン・サプライチェーンの改善法を製造業務に取り入れるための4つのコツ
- リーン・サプライチェーン手法を自動化するための5つの技術的なツール
いくつかの実践事例を使いながら、サプライチェーンの概念を説明していくが、主な目的はサプライチェーンをリーンにするための特定事項を製造業幹部に把握してもらうことである。
コツその1:製造工程の効率性とカスタマーサービスとの衝突を解消
リーン・サプライチェーンの観点から見て私自身が関与していた会社のひとつに、ペンキと塗装の製造業者がある。新しい企業向けアプリケーションを導入後、業務を可視化してリーン・サプライチェーンプログラムの採用を検討していたが、その前に今の業務とプロセスが具体的に何であるかを把握しなければならないことに気づいた。それらが明確であれば、プロセスの変更を決め、その変更によりどの程度付加価値のない業務を減らすことが可能か判断できるからである。
製造業によく見られるように、この会社でも製造工程の効率性と迅速なカスタマーサポートの必要性が衝突していることが明らかになった。製造部門は一度に大量のバッチ生産で効率性を高めようとする傾向があり、これにより原料購買を能率的に行い、機械の設定時間、製造業の人手、その他のコストなどを節約することができる。大量のバッチ生産は単純に一回あたりの製造コストを低くするため低単価という点では魅力的だが、セールス部門の目標とはズレてしまう。製造部門では効率性が優先されるが、セールス部門では増収につながる顧客の対応が評価される。顧客からの注文が今すぐ納品というのではないのに、製造部門が大量のバッチ生産を始めてしまった場合、年間を通じて変更・変動がある顧客のニーズを十分に満たすことは難しくなってしまう。注文の入っている商品が在庫にないことや、製造部門が大量の生産予定に組み込まれているため生産予定にさえないこともある。さらに、これらの大量生産では、大量の資本(つまり完成商品)が実際に収益となるまでに長期間、山積みの在庫となっていることになる。
飲食料品業者やその他プロセス産業の場合、原料や完成商品には有効期限があるので、大量生産の結果、大量の在庫を抱え込んでしまうとかなりの損益になってしまう。
そこで塗装業者では、バッチサイズを小さくするという行動に出た。それ以来、効率性のみに注目することを避け、製造部門がバッチサイズや製造予定に関して一方的に決めるということはなくなった。その代わり、現在では販売予測に基づき、ある期間のみをカバーするのに十分な量しか生産しないようになっている。つまり、各製品がより頻繁に、より小さいバッチサイズで生産されるようになった。この傾向を裏付けるため、生産高だけでなくカスタマーサービス度や在庫回転を基にした、より総合的な重要業績指標(KPI)などの指標を導入することも可能である。
販売予測と製造予定を組み込んだ手法がいくつかある。販売業務計画がその一つである。製造予定を販売予測(一般に短期間)に組み込むことで、実際に発注のあったものを製造し、カスタマーサービスを充実させ、より迅速に対応することができる。在庫回転が速くなるにつれ、在庫数も減る。サプライチェーンの回転が速くなるほど、在庫回転も速くなり常に資本が在庫状態ということが少なくなる。同時にサプライチェーン内で原料が速く動くほど、退化も少なく、賞味期限切れの原料も少なくなるはずだ。
コツその2:供給業者まで含んだシステムを導入
製造予定とその需要に関する基本的な問題が解決したら、サプライチェーン改善法の効率性における最大の障壁となるのは、社内と社外の供給業者とのスケージュール調整における格差である。このような障壁を取り除き、より迅速に対応するため、製造業者大手では積極的に供給業者に協力することもよくある、ということを主要OEMベンダー企業は把握している。
このような障壁は、技術によって取り除くことができる。ペンキと塗装製造業者の場合、主な障壁の一つはパッケージ化であった。ペンキ缶の印刷を外部委託していたので、供給業者側は正確に何缶の製品が納品されるか分かるまで、缶の製造予定を最終決定することができない。実際のところ、製品の製造よりもパッケージ化の方に時間がかかった。実際にペンキを製品に詰めるコストに比べ、パッケージ化にかかるコストは低いが、パッケージ化のスケジュール調整は、製造計画において最も重要で難しい部分の一つである。
そこで、この解決策として、供給者側にポータルを設定することが取り入れられた。ポータルの導入により、パッケージ化するベンダーや供給者側からも製造計画が把握でき、その計画に合った独自のスケジュールを調整することができる。よって、リアルタイムでサプライチェーンの相手とのあらゆる手作業や管理業務が取り除かれ、マニュアル業務や管理上の遅れがなくなる。また、このポータルを導入することにより、長期における製造予測ができるので、需要予測に合わせてベンダーは独自の在庫管理や製造計画を立てることができる。
コツその3:製造資源計画(MRP)プロセスを同時進行
誤解を避けるためだが、ここでは製造資源計画(MRP)のためのシステムを同時進行させることにはあまり関係なく、明確な受注があるまで製造業者が生産に取り掛からないための(MTOシステム)コツを検討していく。
企業がリーン・サプライチェーンに関連した手法に注目しようとしても、この基本的なパラダイム・シフトが組織内で起こり、よくそれが見落とされている。
例えば、多くの企業はMRPプロセスのみを使って業務を行っている。設定見込生産(MTS)モードで製造を行っている企業であれば、このMTS企業向けシステムのみ必要なものだと経営幹部は感じるはずだ。もし製造業者が全製品に対して安定した予測可能な需要が分かるのであれば、この考え方は合っている。しかし、実際のところ、定期的な需要があるのは製造業者のごくわずかである。ほとんどの製造業ではパレートの法則が当てはまる。この法則では、製品の20%が定期的な需要があるもので、効果的に大量生産することができる。しかし、残りの80%は、あまり頻繁に注文されるものではないため、企業のプロセス、システム、スケジュール調整で異なった対応が必要である。このために事実上、MTS製造業者は複数の製造モードを起動させる必要がある。ほとんどのMTS製造業者は受注生産(MTO)システムを同時進行させることで利益を得ている。これにより、他の製品の資本や生産容量の制限をなくし、対応の良さやカスタマーサービスを犠牲にすることなくMTOモードでより効果的に処理することで大量な製品の買いだめを避けることができる。需要のパターンと在庫回転を継続的に分析することで、効率性と対応の良さとの格差が最適なバランスを保つよう、生産の延期時期は何度も変更する可能性がある。
現代的かつ機動的な企業向けアプリケーションには、これら複数のモードを処理するのに必要なツールが全て含まれている。技術を最適化する以外に、製造業者は完成品の需要パターンを注意深く分析し、MTSとMTOを使い分ける必要がある。
コツその4:需要予測プロセスを把握
需要予測に重点を置いていない企業があまりにも多すぎる。積極的にリーン・サプライチェーンを採用している企画でさえ、需要予測が行われていない。需要予測が正確になればなるほど、市場のニーズが把握でき、優位となる。しかし、せっかくリーン・サプライチェーンを取り入れていても、不正確な需要予測を用いているのであれば、それはまるで砂の土壌に家を建てるようなものである。
需要予測が正確であれば、在庫を減らしながらカスタマーサービスの質を高めることができる。不運にも、ほとんどの企業では需要予測の責任が複数の部署に分散されている。時には、そのプロセスはセールス部門で管理されているため、前向きに捉えられすぎてしまう傾向がある。というのも、本来、セールス部門は楽観主義であり、在庫がないからと顧客を失望させることを避けるものである。結局のところ、需要予測の正確さは誰の責任でもないが、おそらくこれは企業に正確な予測ツールがないことが問題なのであろう。よって、この重要な役割は多くの企業で見落とされがちである、ということは驚くべき事実ではない。製造企業では、セールス、製造などの部署よりも総体的な視野を持つ、社内のひとつの部署に需要予測の重点を置くことが必要とされている。
必要とされる技術ツール
リーン・サプライチェーンのメリットを実現させる技術や企業向けアプリケーションは存在しない。しかし、リーン探求の旅では、リーン・サプライチェーン手法を採用する際の障壁を避けるのではなく、企業向けソフトウェアがリーンをサポートすれば、そのメリットをうまく利用することができる。これから紹介する5つの技術的ツールを採用することによって、新しい企業向け環境が協力的で危害のないものであることを確認することができる。
つまり、企業向けアプリケーションに必要とされるツールがいくつかあるということである。アプリケーションがうまく統合されていて、企業サイズに合った、リーンプロセスの促進に必要な可視性を提供するものでなければならない、ということは言うまでもない。測定のできないものを改善することはできないということを忘れてはならない。つまり、企業サイズに合ったプロセスの可視性は、リーン・サプライチェーンの改善に必須である。また、これ以外にも、次にあげる点が必要とされる:
品質管理のために統合されたソリューションが最初の取り組みをサポート。製造・サプライチェーンプロセスで適した品質を記録するシステムがなければ、プロセスの一部では明らかに効率的であっても、別の部分でのエラーを訂正することによる付随的労力のために、その効力が台無しになってしまうことはありえる。統計に基づいたプロセス管理の中で、製造工程における各ロットやバッチに関する品質結果の記録、パフォーマンスの分析ができる報告機能を搭載したシステムが必要である。そうすることで、理想とする価値とプロセスがどれだけ連携しているかを把握でき、品質の欠陥を減らすよう、プロセスを改善することができるようになる。
技術ツール1:サプライチェーンをよりリーンにするための企業向けアプリケーション対応のより良い需要予測ツール。顧客の問い合わせそうな事項をより良く把握すれば、サプライチェーンはよりリーンになるだろう。複数のユーザーが需要計画を同時に見直し、入力できれば、見直しのサイクルが短くなり、予測精度が向上するか確認すること。また、需要予測ツールが、あらゆる事務業務に共通したアプリケーションに予測を書き出し、それを社内の担当者に電子メールで送ることができるということも重要である。予測制度の向上のために、予測ミスを基に簡単にチェックしたり、実行ができるようでなければならないので、平均誤差、平均絶対誤差とその確率(%)、TheilのU統計量やその他を含む、しっかりしたエラー管理機能を見つけるべきである。
技術ツール2:製造モードに関係なく、複数のモード(MTO、ETO、CTOなどを含む)をサポートした企業向けアプリケーション。MTS製造業者でさえ、あらゆる製品やパーツ番号の需要状況を把握する必要がある。これにより、大量生産する価値のある製品の効率を良くし、特別注文として丁重に扱われている製品に関しては、より良い対応が可能となる。
技術ツール3:かんばん方式のように生産工程において引っ張り方式で生産することが可能なツールを提供した企業向けアプリケーション。かんばん方式では、企業がサプライチェーンを通して必要な量だけ生産することが可能なため、サプライチェーンをリーンに、進行中の業務を最小限に、迅速な対応を最大限にし、完成した製品在庫の山積みを避けることができる。
技術ツール4:製造サイト数に関わらず、複数サイトでの業務をサポートした企業向けアプリケーション。サプライチェーンと言えば、関連ベンダー、ディストリビューター、顧客、流通センター、倉庫まで含まれる、ということはつまり複数サイト環境で業務を行っていることになる。サイト間での密接した業務をより良く統合、計画すればするほど、これらの複数サイトが直接の管轄であろうがなかろうが、ノード、ハブ、顧客、供給者を通して情報がシームレスに流れるに伴い、より良い対応ができるようになる。複数サイト機能が何のためにあるかを考えることで、この機能がサプライチェーンを左右する協力的なツールであることが分かるだろう。
技術ツール5:データ管理(特に近年合併や吸収を体験した企業では、この管理を把握することが鍵)。データ管理を把握することで、異なる部署では同じアイテムに対し複数の部分番号を持つ企業の効率を良くすることができる。同じ部分に対し複製のデータや記録を持つサプライチェーンでは、企業サイズの可視性や統合を構築することは難しい。また、会社の詳細情報が一つの企業に全てまとまっているのであっても、企業向け環境が複数の通貨や言語に対応しているか確認することは重要である。この点を確認しないと、海外にいる顧客やベンダーにとって、アプリケーションの拡張は、データを複製することになり、リーン・サプライチェーンの改善を行っていないことになってしまう。要するに社内での慣習と社外のコミュニケーションの両方で、ビジネスを統合し、計画を共有し、リーンの効率性をサプライチェーンに用いるためには、顧客番号やアイテムコードなどに対して共通の言語を持つ必要があるということである。
結論
リーン・サプライチェーン技術とは、購買、流通、グローバル規模での調達など、サプライチェーン管理と直接関連している業務と考えてしまうかもしれない。しかし、製造業の中では全ての業務が互いに影響し合うので、真の意味での改善は企業全体を見つめなければいけないということは周知の事実である。リーン・サプライチェーンを改善するには、企業のトップが効率性と顧客対応度を正確に統合しなければならない。製造業者の社内プロセスをベンダーや顧客に公開するには、既存の固定観念を打ち破る必要がある。また、複数モード製造手法と計画需要に対する責任が必要とされる。しかし、このリーン化による製造業者の得るものは大きく、その利点は明確に最終的な収益に現れる。適した企業向けアプリケーションを使ってサプライチェーンのリーンを採用していれば、在庫への投資が少なくなり、顧客の満足度は増し、供給業者の管理に費やされる業務が少なくなることが実際に期待できる利点である。
Jakob Bjorklund氏は、グローバルな企業向けソフトウェア会社、IFS社のプロセス産業のグローバル・ディレクターである。同氏はLinköping大学(スウェーデン)にて産業工学/マネージメントで理学修士を取得している。IFS社での14年間に、サプライチェーンマネージメントのコンサルティング、セールス・マーケッティング、プロセス産業・サプライチェーンマネージメントの戦略に従事してきた。